「月末の事務、誰かやってくれ……」
カレンダーの残り日数を見て、この独り言が出たことはありませんか。この記事は、その独り言をつぶやいたことのある、あなたに宛てたものです。もっと言えば、家の物音が消えた遅い時間に、ひとりで経理まわりの画面と向き合ってきた、少し前の私に宛てたものでもあります。
私は製造業のひとり社長です。会社と言っても、中身は私ひとり。売る係も、作る係も、数字の係も、私が兼任しています。
プログラミングは書けません。ITを学んだ経歴もありません。なのでこの記事は、エンジニア向けの技術解説ではありません。どちらかというと、その逆側にいる人に向けています。
その私がいまは、月末の事務の入り口を、AI(文章で話しかけると、パソコンの中のExcelやPDFを代わりに開いて、確かめたり書き直したりしてくれる道具)への「声かけ」で始めています。
この記事では、実際の声かけの中身と、かかっているお金、うまくいっていないことまで、順番に全部書きます。読み終わったあなたの来月の月末が少しでも軽くなっていたら、この記事は役目を果たしています。
月末の夜、請求書のExcelを開くのがゆううつだった
少し前までの、私の月末の話をさせてください。
家の物音が消えたあとの、遅い時間。パソコンに請求書のExcelを呼び出すところから、私の月末は始まっていました。
やることは決まっています。今月はどの請求書を作る月なのかの確認。作った請求書の、台帳への記入。そして、今月の入金がいくらになるのかの確認。これをぜんぶ、自分の目と手でやっていました。
もっと正直に言うと、目と手と、自分の記憶で、です。どの請求書を作るんだったかを、私は長いこと、頭の中の記憶に頼って管理していました。
ひとつひとつは、単純な事務です。ただ、単純なのに間違えられません。請求書の数字をひとつ間違えれば、そのまま取引先に迷惑がかかります。「作業は単純、責任は重い」。この組み合わせが、月末をじわじわ重くしていました。
「面倒だな」と思いながらやる仕事は、実際の時間より長く感じませんか。私の月末が、まさにそれでした。
いま月末にやっていることは、AIへの声かけ2つです
今年の4月6日、Claude Code(クロード・コード)というAIをパソコンに入れました。日付まで妙に正確なのは、あとで料金の話をするときに、この日付がもう一度出てくるからです。
導入の動機は、立派なものではありません。「まずは自分の仕事の効率化」。それだけでした。
そしていまの私の月末は、たとえばこんな声かけから始まります。
「今月末に作る請求書、見積から洗い出して」
「今月の入金、いくらあれば大丈夫?」
これだけです。決まった呪文があるわけではなく、その時々の日本語で頼んでいます。専門の言葉も、プログラミングも出てきません。
「そんな雑な頼み方で通じるの?」と思いますよね。大丈夫です、通じます。少なくとも私の月末は、この雑な日本語で毎月まわっています。
ここから、2つの声かけの中身を順番にお見せします。
声かけ① — どの請求書が要るか、見積から洗い出してもらう
1つ目の声かけで、AIは見積を確認して、「今月末に請求書が必要な案件」を洗い出してくれます。
以前は、この確認を自分の目でやっていました。ここで見落とすと請求漏れ(働いたのに、お金を請求し忘れること)につながるので、地味なわりに気の抜けない確認でした。
いまは、AIが洗い出した結果を私が確かめて、請求書そのものは私の手で作っています。作るところは、いまも人間の担当です。
そのかわり、作り終わったあとに、もうひとつ声かけをします。作成した請求書の日付を見て、台帳(どの請求書を、いつ作ったかを控えておく一覧表のことです)を更新してもらうんです。洗い出しはAI、作るのは私、記録はまたAI。いまの月末は、この分担で回っています。
「AIに間違われたら怖い」と思う方、その感覚は正しいと思います。私も、AIの出したものを正しい前提では見ていません。それでも、確認だけすればいい状態から始まる月末は、ゼロから自分で数える月末とは別ものです。
声かけ② — 入金がいくらあればOKかを、チェックしてもらう
2つ目の声かけは、入ってくるお金の話です。
「今月は、いくら入金があれば大丈夫なのか」。ひとりで会社をやっていると、ここが曖昧なまま月末を迎えるのが、いちばん落ち着きません。残高をただ眺めて、なんとなく不安になる時間が発生します。
いまはこれも、AIへの声かけで確認しています。月末に入ってくる予定の入金額を確かめて、「これだけ入ればOK」というラインをはっきりさせる。それだけのことなんですが、数字がはっきりしていると、不安は驚くほど小さくなります。
がんばってお金を増やす話ではありません。いまある数字を、見えるようにするだけの話です。それでも月末の落ち着かなさは、目に見えて変わりました。
「お金の数字をAIに見せるのは怖い」と感じる方もいると思います。その慎重さは、持っていていいと思います。私が見せているのも、自分の会社の数字だけです。誰の情報をどこまで見せるかは、任せる側が線を引く仕事です。
不安の正体は、金額の大きさではなくて、「把握できていないこと」なんですよね。
ちなみに、ここまで書いてきた入金は、どれも会社の仕事のお金です。会社とは別にやっている個人の仕事のほうでは、毎月の入金の受け取りに、無料の保険と屋号付きの口座が持てるサービスを4年使っています。その4年の中身は、良かったところも惜しいところも、こちらに書きました。
▼「仕事の保険、どうしよう」と後回しにしているあなたへ。無料の保険と屋号口座を4年使っている正直な話
https://komuroblog.com/freenance-4years-review/
効果は月2時間。でも、本当の収穫は別でした
効果を、正直な数字で書きます。
件数にもよりますが、月2時間は短縮できていると思います。
「たった2時間?」と思った方もいるかもしれません。半日が5分になった、みたいな派手な話ではなくてすみません。ただ、この2時間は毎月続きます。年に直せば、単純計算でまる一日分です。
そして私の場合、本当の収穫は、浮いた2時間そのものではありませんでした。
頭の中に住みついていた「あれ、やらなきゃ」が、静かになったことです。
記憶に頼る月末と、「声かけすれば出てくる」と分かっている月末では、重さがまるで違います。思い出す仕事が減って、事務の時間より先に、事務のことを考えている時間が減ったんです。だいぶ、楽になりました。
白状します — AIが「以前、ファイルを削除した経緯があるので」と言い出した話
ここまでだと、いい話がすぎると思うので、うまくいっていないことも白状します。
ちょうど、AIが新しい版に切り替わったばかりのころの話です。ある日、めっちゃ普通の会話をしていたら、さらっとこう言われました。
「以前、ファイルを削除した経緯があるので」
「……え? 聞いてないけど?」
そうなんです。私のパソコンの中で、過去のどこかの時点で、AIが何かのファイルを消していたらしいのです。「らしい」としか書けないのが情けないところで、いつ、何が消えたのか、私はいまだに把握できていません。謝罪の場面ですらなく、別の話のついでに、昔からの共通認識みたいな顔で言われました。
幸い、いまのところ作業に支障は出ていません。
それでも、「知らないうちに何かが消えていて、本人の申告で初めて知る」という出来事があったのは事実です。AIに仕事を任せるというのは、この種のことも込みで引き受けることなんだと思います。いいことだけ並べて隠したくはなかったので、ここに書いておきます。
これから任せてみる人は、大事なファイルの控え(バックアップ)だけ、先に取っておくと安心です。この一件から持ち帰れる教訓は、たぶんそれに尽きます。
それでも任せる理由と、いまの分担
ファイルを消されていた(らしい)のに、なぜ任せ続けるのか。
私の場合は、月2時間と、月末の頭の静かさです。受け取っているものが大きくて、やめる理由になりませんでした。
そのうえで、いまの分担はこうです。見積からの洗い出しと、入金のチェックと、台帳の記録はAI。請求書を作るのは、私。出てきた結果を確かめるのも、私です。
道具として完璧だとは、もう思っていません。ただ、月末の私自身も完璧ではなかったので。ひとりで抱えて見落とすより、確かめる相手がいるほうがいい。いまは、そういう距離感で付き合っています。
疑いながら、頼る。矛盾しているようですが、考えてみれば人間の相手とも、仕事はそうやって回してきました。
料金の正直な話 — 22ドルで始めて、1週間で110ドルにしました
お金の話も、隠さず書きます。金額はすべて、私のカードに実際に請求されている支払い額(税込)です。
最初に入れたのは、月22ドルのプラン(Pro)でした。4月6日のことです。
その1週間後、4月13日には、月110ドルのプラン(Max)に変わっていました。
理由は単純です。1週間ほどで、使える量の上限に当たったんです(Proプランには利用量の上限があって、時間がたつと回復する仕組みです)。最初は、その回復を待ちながら作業していました。でも、待っている時間がもったいない。そう思って、プランを上げました。使い始めて1週間の人間の判断としては、われながら早かったと思います。そして現在は、その上の月220ドルのプランを使っています。
「事務のために月220ドルは高すぎでは」と思いますよね。それは正しいです。補足すると、私の220ドルは事務専用の金額ではありません。このブログを書く作業も、思いつきの実験も、ぜんぶ同じAIとやっているので、この金額になっています。月末の事務を任せるだけなら、私が最初に使っていた22ドルのプランでも始められます。
※プラン名と金額は、私が契約した時点の、私の支払いベースのものです。最新の料金は公式の料金ページで確認してください。
あなたの月末の「最初の1個」の選び方
「うちの仕事でも使えるのかな」と思った方へ、最初の1個の選び方を置いておきます。私の経験では、目印は3つです。
ひとつ。毎月か毎週、繰り返しやってくる作業であること。1回きりの仕事は、頼み方を考える時間のほうが長くなります。
ふたつ。やり方が決まっていて、人に説明できること。新しく入った人に引き継げる作業は、AIにも引き継げます。
みっつ。相手が紙ではなく、パソコンの中のファイルであること。ExcelやPDFが相手の作業が、いちばん任せやすいです。ちなみに紙しかない書類も、写真に撮ればファイルになるので、完全にあきらめる必要はありません。
私の場合、この3つがそろっていたのが「見積からの請求書の洗い出し」でした。あなたの月末にも、1個ありませんか。いま頭に浮かんだその作業が、たぶん正解なんです。
最初の声かけは、こんな言い方で十分です。
「このフォルダの見積を読んで、今月請求が要るものを教えて」
「この台帳を見て、まだ請求書を作っていない案件がないか確かめて」
うまく通じなかったら、言い直せばいいだけです。相手は文章で会話できるので、聞き返されても気まずくありません。
さいごに
「月末の事務、誰かやってくれ……」
あの独り言に、いまは「じゃあ、洗い出しとチェックはやるよ」と返してくれる相手がいます。残ったのは、請求書を作る手と、確かめる目だけ。月2時間が浮いて、月末の頭が静かになりました。
ちなみに、AIを使っていることは家族に話してあります。反応は、特にありません。月末の私が静かにラクになったことにも、たぶん誰も気づいていません。それくらい地味な変化です。でも、毎月続く地味な変化が、いちばん効くんです。
実は、3年ぶりにブログも再開しています。そのときのサーバー選びの記録はこちらです。
▼「もう一度ブログをやりたい」あなたへ。1年契約を3週間で無駄にした私が、2度目もConoHa WINGを選んだ理由と全手順
https://komuroblog.com/conoha-wing-restart/
そして、あさっての土曜の朝5時には、毛色の違う話をひとつ公開します。「AIと46個の戦略を検証して、インデックス投資に白旗を上げた話」。AIに仕事を任せるのは今日の記事のとおり快適でしたが、AIに稼がせる方はそんなに甘くなかった、という正直な検証記録です。ほったらかし投資やAI投資が気になっている人が、高い授業料を払う前に読める内容にしました。
ここからは、お願いです。ネタ切れを白状するようで恥ずかしいのですが、次にAIへ任せる実験のネタを、真剣に募集しています。あなたの月末の「これが一番めんどう」を、コメント欄に書いてもらえませんか。例えば「請求書がたまる」。例えば「レシートの山」。それだけ書いてもらえたら、あとはこちらで膨らませます。笑
あなたの月末の夜が、少しでも早く終わりますように。


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